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ラストワンマイルとは?経済全体に影響を及ぼす配送危機の課題 | 東運輸グループ

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2023.10.06

ネットショッピングの急拡大に伴い、個人宅への小口配送が急増した現在の物流業界。配送件数が増えたにもかかわらず、慢性的なドライバー不足や先の見えない燃料費高騰など物流問題は山積しているのが現況です。ネットで手軽に買い物ができる便利な世の中になった反面、消費者へ商品を届けるラストワンマイルが滞る危機的事態の懸念が高まっています。

 

そこで本記事では、ラストワンマイルの配送問題の概要と課題、解決方法について解説します。ネットショッピングを安定的に継続させるための課題解決にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

 

ラストワンマイル問題の概要

まずは、課題を解決するために配送現場のラストワンマイルの現状を把握していきましょう。ここでは、ラストワンマイルの概要と注目されている背景を整理していきます。

 

ラストワンマイルとは

ラストワンマイルとは、消費者が商品を手にするまでの最後の配送区間(最後の1マイル)のことです。厳密には、1マイル(約1.6km)という距離的な意味合いではなく、消費者へ商品を届ける物流の最終区間を意味します。代表的なものとして、宅配便での配達店から個人宅への区間を指します。

ラストワンマイルが注目される背景

物流現場においてラストワンマイルが注目される背景は、近年のEC市場の急拡大により配送する物量の急増に反して、配送を担う労働力確保が難しくなってきているという現状にあります。EC市場への新規参入事業者は年々増加していて、他社と差別化するために送料無料や配送リードタイムを短縮するなど、事業者は配送サービスに力を入れる傾向にあります。

 

例えば、ネット通販最大手であるAmazonは、大型のフルフィルメントセンターを数多く建設して、翌日配達は当たり前、場合によっては当日配送可能な物流ネットワークを構築しているのは、ラストワンマイルを制するための動きの代表例と言えます。

また楽天でも、楽天スーパーロジスティックのような自社独自の物流ネットワークを構築に力を入れています。ラストワンマイルの物流サービスの安定が、EC事業者の事業戦略で欠かせない重要な要素になっていて、ラストワンマイルを制するものが流通を制すると言っても言い過ぎではない状況になっています。

 

ラストワンマイルが抱える課題

ネットショッピングが普及した現代において、購入したものが手元に届かないという事態は消費者にとっても、販売事業者にとっても死活問題です。ここではラストワンマイルが抱える課題について解説します。

・再配達の常態化

・配達ドライバー不足

・送料無料による利益圧迫

それぞれ詳しく確認していきましょう。

 

再配達の常態化

宅配便の取扱個数は、2010年には32.2億個であったのに対して、2020年には48.4億個まで増加しており、10年間で約1.5倍に急増しています。今後、高年齢層もECサイトの使用頻度が高まり、さらにECサイトの裾野は拡大していくものと見られています。国土交通省の調査によると、2025年には58.8億個、2030年には71.5億個まで取扱個数が増えると予想されています。

 

宅配便の取扱個数は増加している一方で、再配達率は下がっていません。国土交通省調査によれば、再配達率の推移が2017年から2019年まで15%前後で推移していましたが、コロナ禍による外出自粛により在宅率が向上したため、2020年4月時点では8.5%と大幅に低下しました。しかしながら、外出自粛が徐々に緩和されるのと比例して、2021年10月時点の再配達率は11.9%まで戻ってきていて、今後も上昇傾向にあると懸念されています

 

再配達の発生は、ドライバーの人件費やトラックのガソリン代、荷物の再保管の管理コストなど、運送会社にとって大きな費用負担になっています。

 

引用:国土交通省「多様なライフスタイルをささえる持続可能な宅配の実現に向けた手引き」

引用:国土交通省「多様なライフスタイルをささえる持続可能な宅配の実現に向けた手引き」

 

配達ドライバー不足

少子高齢化や物流業界の労働環境などの問題により、配達ドライバーの絶対数が不足しています。それに加えて、配達する物量が増加しているため、相対的にも労働力は不足しているのが現状です。

 

宅配便の取扱個数の増加と高い再配達率により、一人当たりのドライバーが担当する配送個数は増え続けています。また、ドライバー数が十分に確保できずに少ない人数で配達を完了させるために、既存のドライバーの走行距離や労働時間の増加に繋がり、ドライバーの求人募集をしても確保がさらに難しくなるという悪循環を発生させています

 

限りのある配送キャパシティに対して「無料で」「何度でも」依頼できる再配達を当たり前のサービスとして使い続けることは、我々の生活に欠かせない宅配業界の潰しかねない「社会的損失」という認識を頭に入れるべきなのかもしれません。

 

送料無料による利益圧迫

競争が激化するECサイトでは、他社との差別化として、送料無料のサービスを提供してきました。今日でも送料無料のサービスが一部のECサイトで当然のように行われていますが、配送業務の委託先となる運送会社を取り巻く環境は、人件費や燃料費高騰など「送料無料」と逆行する動きになっています。

 

近年では、宅配業界でも料金値上がりが実施されていて、それにより送料無料の取り止めを検討するECサイトが出始めている一方、多くのECサイトは従来通りに送料無料のサービスを継続しています。コストが上昇する状況で送料無料のサービスを継続させるために、少なからず運送会社へのシワ寄せが発生していて、売り上げや利益部分を圧迫しています。

 

社会全体や消費者個人は、安く買い叩くの是とするのではなく、「送料無料なんてものはない」「適切な運賃を発生させる」という健全な経済性の認識を持つことが求められているのかもしれません。

 

ラストワンマイルの課題を解決する方法

前章でラストワンマイルが抱える課題を確認しました。今や経済全体に大きな影響力を持つEC市場が仮に停滞してしまうと、社会全体に大きな悪影響を及ぼしかねない問題に発展してしまいます。ここではラストワンマイルの課題を解決する方法について解説します。

・再配達の撲滅

・配送の効率化

・労働力確保

それぞれ詳しく確認していきましょう。

再配達の撲滅

再配達が発生すると、持ち戻りの手間、貨物の再保管、再配車の手配、再配送作業などの大きな負担が発生します。いかに受取人が不在のときに再配送にならない手段を考えられるか、または、新たな受取方法を構築することが求められています。

 

受取人不在の問題に対して、宅配ボックスの設置や置き配サービスの普及が考えられます。パナソニックが2016年に福井県あわら市で行った各戸に固定型の宅配ボックスを設置する実証実験では、再配達率が49%→8%へ減少しました。設置に工事が必要な固定型の宅配ボックスに抵抗がある場合は、手軽に使用できる宅配バックという選択肢もあります。シリンダー式の鍵が付いた宅配バックを折りたたんだ状態で玄関のドアノブにかけておき、配達員は宅配バックに荷物を入れ施錠することで配達完了になります。

 

また、自宅以外で多様な受け取り方法の普及もポイントになります。コンビニエンスストアや鉄道駅、郵便局など生活の中で立ち寄りやすい場所での受け取り可能な仕組みが検討されています。それらの店舗での受け取りの他、最近ではPUDOステーションのような「オープン型宅配ロッカー」を店先に設置して24時間自由に受け取りできる方法も徐々に普及が進んでいます。

引用:国土交通省「多様なライフスタイルをささえる持続可能な宅配の実現に向けた手引き」

配送の効率化

ラストワンマイルにおいて、配送を効率的に行える仕組みを整備できれば、配送業者の負担を大きく軽減させられます。具体的な方法は、物流センターから届け先までの輸配送全般を管理するシステムである「輸配送管理システム」(TMS:Transport Management System)の導入が挙げられます。

 

輸配送管理システムを導入すれば、システムが配達時の移動データやガソリンの使用状況などを管理して、コスト削減や省力化のために最適な配車計画を作成してくれます。また、共同配送を取り入れれば、配送リソースの割り振りや車両手配を複数事業者で行うことができるため、労働力不足の改善効果も期待できます。

 

また、前述したオープン型宅配ロッカーを活用すると配送効率の向上と省人化効果が期待できます。複数の届け先へ配達に行くのに比べて、ロッカーが設置された1カ所にまとめて配達できるため、配送の効率性は格段に向上します。

 

労働力確保

再配達率が改善されて、配送を効率化できたとしても、配達を担う労働力の確保は重要になります。

 

最もシンプルな方法として、労働環境の改善により、ドライバーを確保していく方法が考えられます。そのためには、他産業と比較して遜色ない休暇取得体制と拘束時間の短縮化、給与体系の見直しに取り組む必要があります。現在の配達員の給与体系は、配達個数に比例することが一般的で、休みが増えたり、労働時間が短くなったりするだけでは給与額が減少してしまい、むしろ労働環境は改悪されてしまうおそれがあります。労働力確保のためには、配達員の給与体系の抜本的な改善を検討する必要があるでしょう。

 

その他、ドローンを活用した配送サービスや自動運転をはじめとした新しいテクノロジーの活用も打開策のひとつとして期待されています。国土交通省は、2023年2月21日付けで公募していたドローンなどを活用したラストワンマイル実証事業の実施を決定しています。米Amazonでは、自動配達ロボット「Scout」のサービス提供を一部で運用開始しているなど、今後同様の自動運転技術の活用が期待されます。

引用:DRONE「国交省、無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業を実施」

まとめ

EC市場がもたらす経済効果や影響力が増大していく中で、ラストワンマイル問題解決は日本経済全体にとって必須事項です。消費者の利便性向上を図ったうえで、社会全体で生産性向上に取り組んだり、ITや最新テクノロジーを活用したりなど、配送現場の最適化が求められています。個々の事業者の努力だけでなく、事業者間での連携や官民一体の対策を実施していく必要があります。

 

本記事をお読みいただくことが、円滑な経済活動に必要不可欠なラストワンマイルについて考える機会になれば幸いです。

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