ミルクランとは?巡回集荷を導入するメリット・デメリットを解説 | 東運輸グループ
2023.10.06
ドライバー不足により物流事業を継続することが困難な状況である一方、安全性や環境への配慮も求められる物流業界において、配送方法の最適解の一つとして注目されるミルクラン。輸送コストの削減や配送の効率化など多くの物流課題を解決できると、多くの企業での導入が検討されています。
そこで本記事では、ミルクランの概要と導入によるメリット・デメリットについて解説します。物流コスト削減や効率化についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
ミルクランの概要
「ミルクラン」と聞いて、物流用語と連想されない方も多いのではないでしょうか。あまり聞きなれない言葉ではありますが、配送方法の一つとして知っておいて損はありません。ここではミルクランの概要を解説していきます。
ミルクランとは
ミルクランとは、共同配送の一種で1台の車両で複数の配送元を巡回する集荷方式です。「巡回集荷」とも呼ばれ、発注者が商品や原料を仕入れるために車両を手配してサプライヤーのもとを巡回して集荷していきます。
「ミルクラン」の語源は牛乳メーカーが生乳を確保するために各牧場を巡回して集荷した方法に由来しています。集荷ルートを固定化させ、その順番通りに集荷していくことにより、配車組みやドライバーの運行状況把握などの管理の手間を省くことができます。特に各サプライヤーの納品単位が車両1台分に満たない場合に有効な方法です。
ミルクランが適しているケース
ミルクランは、主に自動車や家電などの製造メーカーで導入が進んでいます。数多くの部品を使用する製造メーカーにおいて、各部品メーカーに個別に納品してもらうよりも、自社主導でミルクラン方式による集荷する方が効率的なケースがあります。
具体例として、トヨタ自動車が2020年9月より東海地域の部品仕入れを自社手配の「引き取り物流」へ変更すると発表しました。各部品メーカーをミルクラン方式で集配する輸送計画の立案とオペレーション、積み降ろしの荷役をトヨタがコントロールすることにより、ドライバーの負担軽減や安全性向上が実現できると期待されています。
ミルクラン導入のポイント
ミルクランを効果的に導入するためには、集荷先のサプライヤーと集荷場所や時刻、緊急時の対応についてしっかりと打ち合わせしておくことが重要です。打ち合わせが不十分なままミルクランを導入してしまうと、車両サイズの不一致による車両再手配や荷待ち時間の発生による遅延など、必要な原料や資材が手配できないという事態が発生してしまいます。
また、配送管理システムを構築しておくことで、より安全かつ効率的にミルクランを導入できます。リアルタイムで車両位置や到着予定時刻を管理することにより、最適なルート算出やトラブル発生時の対応がしやすさなどが格段に向上されます。
ミルクランを導入するメリット
ミルクランを導入することにより、以下の3点のメリットがあります。
・コストの透明化
・物流コスト削減
・安全性の向上
それぞれ詳しく確認していきましょう。
コストの透明化
本来、仕入れる原料や資材は「一物一価の原則」で管理します。しかし、調達先が複数ある場合、製造コストが同じでも配送コストが異なると、一物一価の原則での管理ができなくなります。また、サプライヤーが原料や資材を納品する場合は、請求金額に製造コストと配送コストが混在するため、内訳を把握することが困難になります。
ミルクランにより発注者が集荷を行うと、サプライヤーからの請求金額は製造コストのみと明確化できるため、コストが透明化されます。コストが透明化されると、資金計画の作成やコストの見直しなどが容易になります。
物流コスト削減
従来のサプライヤーに配送まで依頼する場合、配送費用はサプライヤーのコントロール下にあり、発注者側の工夫で配送費用を削減することができませんでした。それに対して、ミルクランを導入すると発注側の引き取りになるため、発注者の工夫次第で費用を削減することが可能になります。また、配送コスト削減のために発注単位をまとめる必要がなくなり、必要な時に必要な分だけ仕入れることが可能なため、過剰在庫のリスクも大幅に軽減できます。
その他、ミルクランであれば少数のトラックでまとめて集荷できるため、荷物が届いた際の荷役や検品も少ない回数・労力で完結できます。その結果、配送や検品にかかる調達コストを最小限に抑えられます。
安全性の向上
従来のサプライヤーが配送車両を手配する場合、サプライヤーの数だけトラックが必要です。その結果、荷降ろし場や周辺道路で混雑が発生して、渋滞や接触事故、排気ガス、騒音などのトラブルが発生しやすい状況を作っていました。
その点、ミルクランを導入すると必要なトラック数が少なくなるため、構内や周辺の安全性が向上します。また、トラック台数減少により排気ガス排出量が減るため、環境保全という観点でも大きなメリットがあります。
ミルクランを導入するデメリット
多くのメリットのあるミルクランも少なからずデメリットが存在します。導入前に以下の3点のデメリットを把握しておきましょう。
・物流コスト増加リスク
・集荷時間制限によるスケジューリングが必要
・車両制限による配車調整が発生
それぞれ詳しく確認していきましょう。
物流コスト増加リスク
サプライヤーが近隣に集中している場合には、大きなメリットがあるミルクランもサプライヤーが遠方に点在していると集荷するコストが高くなってしまいます。1カ所当たりの集荷量が多い場合も、集荷に行く回数や台数が増えるため同様にコスト増になります。
従来、遠方のサプライヤーが行っていた積み合わせ配送をするなどの工夫を発注者側がしなければならなくなるため、手配の管理コストも上がってしまうことを頭に入れておきましょう。
集荷時間制限によるスケジューリングが必要
1台のトラックで複数のサプライヤーを巡回集荷する場合、限られた時間で集荷を行うスケジューリングが必要です。オンタイムで順調に集荷できれば問題ありませんが、事故や工事による道路渋滞や集荷先の人員不足や車両混雑による遅延が発生すると制限時間内での集荷ができなくなり、急遽別車両の手配が発生したり、集荷を翌日へ変更したりといったことが発生します。
最悪の場合、原料や資材が予定通り届かないために製造予定変更も発生します。それら全ての責任を自分たちで負わなければならないということになります。
車両制限による配車調整が発生
複数のサプライヤーを巡回集荷する場合、その中に集荷場所が狭いサプライヤーがいるときには、大型トラックでは集荷できないこともあります。集荷する物量としては、大型トラック1台で回れたとしても、4トントラック2台で集荷しなければならないなどの配車調整が発生することがあります。
当然、配車調整はコスト増加にも繋がるため、集荷ルートや集荷物量の確認とともに、サプライヤーごとに車両制限がないか確認しておきましょう。
まとめ
原料や資材の価格が高騰している今日において、サプライヤーからの仕入れコストを管理、削減したいと悩まれている企業は多く存在します。ミルクランは多くの課題を解決してくれる新たな方法と期待されている一方で、自社の事業スタイルや方針にフィットしない場合には、マイナスに作用してしまう可能性があることも理解しておきましょう。
本記事でご紹介したメリット・デメリットを把握したうえで、ミルクラン導入を検討してみてはいかがでしょうか。