共同配送とは?メリット・デメリットから有効性を解説 | 東運輸グループ
2023.11.13
人手不足や労働時間上限規制、燃油価格高騰などの問題を抱える物流業界。ムリ・ムダ・ムラのない効率的な物流の仕組みが必要とされる現代において、注目される輸配送形態のひとつに共同配送が挙げられます。
本記事では、共同配送の概要からメリットとデメリットについて解説します。物流課題の解決のヒントになる情報をまとめていますので、ぜひご参考にしてください。
共同配送とは
共同配送とは、複数のメーカーが同じ配送先の荷物を持ち寄り、共同で配送を行う仕組みのことです。また、その仕組みを支えるため複数の物流企業が連携して、複数メーカーの商品を混載して輸送する輸送手段のことを指します。
経済環境の変化により、小口多頻度化した貨物への対応やリードタイムを厳守するための労働力確保など、多くの難しいニーズに応えることが求められる物流業界にとって、輸配送を合理化できる共同配送は、複数の課題を解決するひとつの方法になり得ます。共同物流を上手く活用できれば、トラックの積載効率を上げることで、必要車両台数を削減して効率的な配送が可能となることはもちろん、労働力不足や長時間労働の改善、物流費削減、交通渋滞の緩和、CO2排出量の削減効果など、多くのメリットが期待できます。
共同配送のメリット
多くの物流課題解決の一手になることを期待されている共同配送には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは以下の3つのメリットを解説します。
・配送を効率化できる
・物流コストを削減できる
・環境への配慮ができる
それぞれ詳しく確認していきましょう。
配送を効率化できる
複数の荷主企業が個別に配送を行う場合、企業の数だけ車両台数が必要になります。しかし、共同配送であれば複数の企業の貨物を1台のトラックへ集約できるため、配送効率が上がり、必要最低限の車両での配送が可能です。配送の効率化は、ドライバー不足やドライバーの長時間労働の問題解決に直結することなので、安定的な物流事業継続のためにも社会全体で考えていくべき課題といえます。
荷受する側の企業にとっても大きなメリットが期待できます。共同配送の場合、個別配送の場合に比べて同じ荷量であっても荷受するトラックの台数が少なく済むので、荷受の人員削減や労働時間の短縮が望めるでしょう。
物流コストを削減できる
共同配送により輸配送の効率化が実現されれば、トラックの手配台数が減ることにより、輸送コストの削減ができます。ドライバーの人件費や燃油費、配車や管理にかかる費用を抑えられるため、適切に物流コストを削減できる方法です。
物流コスト削減は荷主にとって大きなメリットになるのは当然ですが、物流企業にとっても大きなメリットをもたらします。労働力不足が深刻な物流企業にとって、労働力を安定的に確保するために、求人の募集や採用、教育活動は大きな負担になっているのが現状です。また多くの人材がいるということは、それだけ管理コストがかかることを意味しているため、物流の効率化により、それらのコスト削減ができれば物流企業にとっても大きなメリットと言えます。
環境への配慮ができる
CO2の排出量削減は、物流企業にとって大きな社会的な命題です。複数荷主の貨物をまとめて輸送することにより、各荷主が個別で車両手配するときに比べて車両台数が削減され、CO2排出量を削減できます。
改正省エネ法では、輸送事業者にはエネルギー使用状況などの定期報告や中長期計画の提出が求められています。また、荷主にも同様に計画の提出や委託している輸送のエネルギー使用状況などの定期報告を義務付けています。SDGsの観点からも持続可能な運送ネットワーク構築は非常に大きな社会的意義があり、環境配慮型の輸送へのシフトはこれからの物流のビックトレンドと言えるでしょう。
共同配送のデメリット
メリットに注目が集まる共同配送ですが、当然少なからずデメリットも存在します。
ここでは以下の2つのデメリットを解説します。
・品質担保が難しい
・臨機応変な対応が難しい
それぞれ詳しく確認していきましょう。
品質担保が難しい
貨物を共同で輸配送するということは、個別で輸配送するときに比べて管理が疎かになりやすいというリスクは避けられません。チャーター便で輸配送する場合は、貨物を完全に自社の管理下に置けますが、共同配送の場合では複数貨物の一つになってしまい、管理が煩雑になってしまうため、破損や紛失、追跡がしづらいなどのトラブルが発生しやすくなります。
ただし、共同配送とよく比較される路線便と比較すると、中継ポイントが少なかったり、ハンドリング回数が少なく済むなど、輸送途中の破損や紛失のリスクは比較的少ないと言えます。
臨機応変な対応が難しい
自社の貨物のみで配送を行っているのであれば、急なトラブルや変更、キャンセルにも対応できますが、それらの緊急事態へ対応がとりづらい点が共同配送のデメリットのひとつです。共同配送は、複数の企業の貨物を共同で輸配送する性質上、一部の企業の都合で予定を変更することが許されません。
また、時間指定への対応が難しかったり、納入先でのパレット替え作業のような付帯作業への対応が難しかったりなど、顧客への物流サービスレベルの低下が発生するおそれがあります。
共同配送の実例
ここでは、国土交通省の資料「連携による持続可能な物流に向けて」より抜粋して、物流総合効率化法に基づく総合効率化計画の認定事例とグリーン物流パートナーシップ会議の表彰事例をいくつかご紹介します。
同業他社間での輸配送や保管の共同化
・ビール業界における共同輸配送の進展
大手2社による北陸方面への共同モーダルシフト(平成29年1月認定)
大手4社による北海道での共同モーダルシフト・共同配送(平成29年9月認定)
大手4社による関西・中国から九州方面への共同モーダルシフト(平成30年7月認定)
・加工食品業界における共同化の取組
メーカー6社が幹線共同輸送及び共同配送を実施(平成28年度国土交通大臣表彰)
うち一部が物流子会社を統合し、新たな物流会社を発足(平成31年~)
さらに他の2社を加え8社で物流に関する課題を討議する場を設置(平成28年~)
・菓子業界における共同配送
スナック菓子等の温度管理を要しない商品及びチョコレート菓子等の温度管理を必要とする商品それぞれで従来から同業他社間での共同配送を実施
・医薬品業界における共同保管・共同配送
メーカー4社が北海道において共同保管及び共同配送を実施(平成30年度経済産業大臣表彰)
異業種間での共同輸配送や輸送リソースの共同利用
・異業種間連携による海運モーダルシフト
パレットレンタル会社、加工食品メーカー及び日用品メーカーが共同で海運ラウンド輸送を実施 (平成30年8月認定)
・異業種間連携による中継輸送
大手小売及び日用品メーカーが関東-中部間でトレーラーを用いての中継輸送を実施 (平成28年度経済産業大臣表彰)
・異業種間連携による共同輸送
大手外食チェーン及び大手新聞会社が塩と新聞の共同輸送を実施(令和元年6月認定)
まとめ
今回は、共同配送の概要からメリットとデメリットについて解説しました。持続可能な物流ネットワーク構築が急がれる物流業界において、共同輸送は解決策のひとつになり得る手段です。現在チャーター便をメインに輸配送を行っている企業が共同配送へシフトすると、自由度が下がったということで、物流サービスが低下したという感覚になるかもしれません。しかし、慢性的な労働力不足や高止まりする燃料費に加えて、残業時間の上限規制も始まる物流業界の実態を鑑みれば、共同配送という方法は、それら多くの物流課題解決の最適解になるのかもしれません。