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燃料サーチャージとは?燃料費高騰問題に直面する物流業界を解説 | 東運輸グループ

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2023.10.19

近年のガソリン価格高騰により、燃料費の捻出に苦しんでいる物流業界。企業努力により燃料費の高騰分を賄うことが難しくなってきている物流企業にとって、事業継続のため、何らかの救済策が必要な状況でした。そこで政府主導で導入されたのが、平常時から比べて上昇した燃料費分を割り増し運賃の形で取引企業に負担してもらう「燃料サーチャージ制」です。

 

燃料サーチャージ制の導入が進む背景には、適正な運賃収受により物流業界全体を守ることやドライバー確保、離職防止のための労働環境改善の必要に迫られている現実があります。社会インフラのひとつに数えられる物流の安定的継続のために、社会全体で燃料サーチャージの必要性について考える必要があるでしょう。

 

本記事では、燃料サーチャージの概要から算出手順、導入時のポイントを解説していきます。物流業界の方はもちろん、物流企業をパートナーに事業を行われている取引企業にも有益な情報になっていますので、ぜひ参考にしてください。

 

燃料サーチャージとは

引用:全日本トラック協会「燃料価格上昇に対処するための燃料サーチャージ導入ハンドブック」

燃料サーチャージとは、燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建てで設定する割り増し運賃のことです。標準的な運賃として軽油の基準価格を定めて、燃料価格が基準価格を上回ると燃料サーチャージが適用されます。

 

政治情勢の不安や経済状況の変化などを背景に変動する燃料価格は、トラック輸送を行う物流企業の収支に大きな影響を与えています。軽油価格が1リットル当たり1円上昇すると、物流業界全体で約150億円の費用増になるといわれています。しかし、過去の物流業界では、燃料費上昇分を運賃に転嫁することが難しい状況が長らく続いていました。

 

そのような状況の中、安定的な物流機能を守るため、政府主導で燃料価格が基準価格を超過した分を取引企業へ請求できる燃料サーチャージ制が導入されました。なお、燃料サーチャージは、燃料価格が基準価格を下回ったときには適用されません。

 

燃料サーチャージの算出手順

燃料サーチャージの具体的な算出手順は、以下の3つのステップにより行います。

・基準価格の設定

・燃費の把握

・燃料サーチャージの算出

 

順番に詳しく確認していきましょう。

 

基準価格の設定

燃料サーチャージは、燃料価格の変動幅をもとに算出するため、変動幅を捉えるための基準となる燃料価格を設定する必要があります。燃料サーチャージが適用される基準価格を決めて、実際の燃料価格が「基準価格」を上回れば、燃料上昇分を燃料サーチャージが発生して、反対に「基準価格」を下回れば燃料サーチャージは発生しません。

 

基準価格を設定する際には、資源エネルギー庁の一般小売価格や全日本トラック協会調査、新聞等の出版物、WEBサイトなどから入手できるデータを参考にする方法があります。その他、燃料価格が概ね100円前後で推移していて、サーチャージの計算を簡略化する目的から、「標準的な運賃」の燃料費単価は100円とされていて、基準価格100円を採用している企業も多数存在します。

 

また、基準価格の設定時に消費税を含めるかは厳密な決まりがなく、取引企業間での協議により決定されます。しかし、軽油引取税は必ず含める必要があるので、注意してください。( 国土交通省の届出書のひな形は、消費税等を含めない方式で作成されている一方で、石油情報センターや統計調査の一般小売価格は消費税等が含まれています)

引用:国土交通省「燃料サーチャージ」の計算式等を規定する告示の制度について

 

燃費の把握

燃料サーチャージを適用させるために、該当車両の燃費を車種別に把握します。該当車両が、複数の登録年度にまたがっている場合などは、実際の燃費を車種別に把握することが難しいでしょう。

 

そのようなときは、国土交通省の調査データの「車型別の平均燃費」を参考にする方法が有効です。国土交通省の調査データであれば信用度が高く、取引企業からも受け入れてもらえる期待が高くなります。なお、一般道利用と高速道路利用時で燃費が異なりますが、一律で国土交通省のデータを活用しているケースが一般的です。

 

燃料サーチャージの算出

燃料サーチャージの算出は、まず燃料消費量(ℓ)を「走行距離(km)÷燃費(km/ℓ)」で計算して、その後「燃料消費量(ℓ)×燃料価格上昇額(円/ℓ)」で燃料サーチャージ(円)を算出します。例えば、燃費3.7km/ℓの大型トラックで計算する場合、100km(走行距離)÷3.7km/ℓ(燃費)×30円(円/ℓ)=810円(燃料サーチャージ) と計算できます。

燃料価格上昇による燃料サーチャージの算式

燃料サーチャージ(円)=走行距離(km)÷ 燃費(km/ℓ)× 燃料価格上昇額(円/ℓ)

 

燃料サーチャージは距離制運賃と時間制運賃で算出方法が異なります。距離制運賃は、月間の燃料サーチャージを1回当たりの往復走行距離を基礎に算出した「1運行当たり燃料サーチャージ」に輸送回数をかけて計算します。一方時間制運賃は、定期で運行している場合などに特に有効な方法で、過去の実績から月間の平均走行距離を計算して、それに基づいて計算します。

 

その他、路線業者など1車単位で輸送を行わない場合には、個建てや重量建て、容積建てで燃料サーチャージを計算するケースもあります。計算は以下の式で算出できます。

【個建ての燃料サーチャージの計算式】

1個当たりの燃料サーチャージ=燃料サーチャージ÷(積載可能個数×平均積載率)

【重量建ての燃料サーチャージの計算式】

1トン当たりの燃料サーチャージ=燃料サーチャージ÷(最大積載重量(トン)×平均積載率)

【容積建ての燃料サーチャージの計算式】

1㎥当たりの燃料サーチャージ=燃料サーチャージ÷(最大積載可能容積(㎥)×平均積載率)

 

燃料サーチャージを導入する際のポイント

燃料サーチャージの算出が終われば、取引企業と燃料サーチャージの導入について相談を行います。燃料サーチャージを取り入れるためには、相互の企業で相談のうえ、問題が起こらないように進めましょう。ここでは、燃料サーチャージを導入する際のポイントをまとめていますので、確認していきましょう。

 

費用の妥当性を明示する

燃料サーチャージを適正に実施するには、正確な原価計算を行わなければなりません。根拠が乏しかったり、妥当性がないと判断されたりする計算によって算出された請求金額ではトラブルのもとになり、最悪の場合は取引停止になりかねないでしょう。

 

トラックの走行距離・燃費・燃料の基準価格と上昇額が正確に両社が把握できていれば、燃料サーチャージの請求で問題が発生することはないはずです。原価計算をしっかりと行い、場合によってはその情報を共有しましょう。

 

費用見直しを入念にする

燃料高騰は社会全体で周知の事実ですが、燃料費が上昇してすぐに燃料サーチャージの相談をするのではなく、費用の見直しを入念に行なったかチェックするべきでしょう。燃料サーチャージの妥当性を示すために、節約できる箇所がないか確認したり、取引先が納得できるようにデータを数値化しておくことも大切です。

 

燃料サーチャージの費用負担を取引先へ転嫁する相談は、費用の見直しをしたうえで、最終手段のつもりで行いましょう。

 

取引先とコミュニケーションによる理解を得る

燃料サーチャージ制の導入を相談する場合、事前に取引先へ燃料サーチャージが必要な理由や背景の説明を丁寧に行う必要があります。適正運賃の収受による取引の適正化は、長期的に見ればお互いの企業にとってメリットがあるはずですが、被請求側の企業にとっては大きな費用負担になるのも事実なので、慎重に進めましょう

 

原価計算の数値や経費節約の実績などの説明資料を用意して、取引先がしっかりと理解できるようにコミュニケーションを欠かさないことが重要になります。

 

まとめ

今回は、燃料費高騰により安定輸送継続の危機に直面している物流現場の燃料サーチャージについて解説しました。乱高下する燃料費が輸送の経費へ直接影響をもたらすため、取引企業間で燃料サーチャージ制をどのように運用していくか話し合う必要があります。安定的に継続可能な物流体制を作るために、社会全体でのエネルギー問題に取り組むことが求められています。

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