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安全在庫と適正在庫とは?それぞれの算出方法とメリット・注意点を解説 | 東運輸グループ

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2023.07.28

近年、EC市場の拡大により多品種少量生産や在庫管理を求められる場面が増え、適切な在庫管理方法を構築する重要性が高まっています。適切な在庫量を保つことは、欠品による販売機会の損失を防止できたり、煩雑な在庫管理による従業員の残業を抑制できたりとメリットがたくさんあります。

しかし、適切な在庫管理の捉え方や手段は、企業や業種によって大きく異なるため、どのように在庫管理を行えばいいのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、適切な在庫管理をするうえで重要な要素になる「安全在庫」と「適正在庫」の概要から、実務に活用するための安全在庫と適正在庫の算出方法まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

安全在庫と適正在庫の違い

安全在庫は、在庫管理の現場において、絶対に無視できない重要な指標のひとつです。安全在庫が維持できなければ、欠品による販売機会損失や余剰在庫による追加の保管料や廃棄処分費が発生するおそれがあります。それらのリスクに備えるために、安全在庫と適正在庫の正しい知識が必要になります。

 

安全在庫とは?

安全在庫とは、欠品の発生を防ぐ最低限の在庫のことです。需要は季節や流行によって変化する不確実なものであり、どれぐらいの在庫を持っておけば欠品を起こさないかという考えのもと設定する在庫値になります。

 

適正在庫とは?

安全在庫とよく似た混同されやすい言葉として、「適正在庫」があります。ほとんど同じ意味合いと思われがちですが、実際は異なります。安全在庫の目的が欠品を防止することであるのに対して、適正在庫の目的は商品や製品を多すぎず少なすぎない適切な在庫を確保して企業の利益を最大化することです。

安全在庫数を算出すれば、必要な在庫の下限数は設定できますが、上限数は設定できません。そのため安全在庫を設定すれば、欠品リスクには対応できますが、余剰在庫を抱えてしまうリスクがあります。安全在庫と適正在庫を組み合わせて設定することにより欠品発生と余剰在庫を防止できます。

 

安全在庫を持つメリットと注意点

安全在庫を持つことで、企業の物流活動に大きなメリットがあることがイメージしやすいと思いますが、具体的にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここでは、安全在庫を持つメリットと注意点を3つずつ紹介します。

メリット

・販売機会の損失防止

・余剰在庫の削減

・キャッシュフローの改善

注意点

・安全在庫値の算出は簡単ではない

・欠品を完全には防止できない

・余剰在庫をゼロにはできない

 

メリット

販売機会の損失防止

欠品は企業の売上・利益低下をもたらすのはもちろん、顧客が商品を購入できない期間を発生させることにより顧客からの信頼損失につながりかねません。安全在庫を確保していれば欠品リスクを防げるため、販売機会の損失防止のための大きな役割を担ってくれます。

 

余剰在庫の削減

欠品を防ぐことだけを目的にするのであれば、在庫を多めに確保すればいいですが、それでは倉庫の保管場所確保や保管料の費用増の問題が発生してしまいます。また、余剰在庫が多くなると、大量・多品種の在庫管理作業も発生するため、業務効率の低下が懸念されます。安全在庫を設定することで、適正な在庫数管理ができるので、余剰在庫の削減が見込めます。

 

キャッシュフローの改善

在庫は販売できて初めて現金化できる資産のため、倉庫に保管しているだけではキャッシュフローを悪化させます。安全在庫の計算によって確保すべき在庫の下限値を把握できれば、製造から販売のフローをスムーズに回すことができるため、キャッシュフローが改善されます。

 

注意点

 

安全在庫値の算出は簡単ではない

安全在庫は、複雑な計算方法に則って算出します。「安全在庫係数」や「標準偏差」、「リードタイム」などの数値を商品ごとに把握したうえで算出していくため、すべての商品の安全在庫値を算出するには、時間と手間がかかってしまいます

 

欠品を完全には防止できない

安全在庫量を把握していても、予期せぬトラブルや予想できない社会情勢の変化で需要増になり、欠品が生じてしまう可能性はあります。欠品リスクを最小限に抑えるためには、定期的に安全在庫値の見直しを行ったり、在庫管理システムによる需要予測の精度を高める試みが重要になります。

 

余剰在庫をゼロにはできない

安全在庫はあくまで在庫量の下限を決める指標であるため、余剰在庫が生じるリスクの懸念があります。余剰在庫をゼロに近づけるためには、併せて適正在庫も算出し在庫量の上限も決める必要があります。季節波動の大きな商品や需要変動が大きい商品は、在庫使用量が正規分布に沿っているかの確認だけでは不十分なため、過去の傾向などをもとに在庫上限値を設けることも検討すべきです。

 

安全在庫の計算方法

安全在庫は「安全在庫係数」、「標準偏差」、「リードタイム」の3つの数値をもとに算出します。ここでは安全在庫の計算方法について、3つの数値の意味や算出方法を解説します。

 

安全在庫係数

安全在庫係数とは「どれくらいの欠品リスクを許容できるか」という割合(欠品許容率)を係数に変換したものです。欠品許容率は商品の種類や過去のデータなどを総合的に考慮して決定します。

一般的に使用される欠品許容率と安全係数の関係は以下の表の通りです。例えば、100回の注文に対して5回まで欠品を許容する場合、欠品許容率は5%となり、安全在庫係数は1.65となります。欠品リスクを下げたい時ほど、使う係数は大きくなります。

欠品許容率

安全係数

0.1%

3.10

1.0%

2.33

2.0%

2.06

5.0%

1.65

10.0%

1.29

20.0%

0.85

30.0%

0.53

 

 

標準偏差

標準偏差とは、需要の平均値からのばらつきを判断するための数値です。標準偏差が小さいほど、需要のばらつきが少ないことを示しています。標準偏差の計算は、対象となる商品の過去の出荷量や販売数量をもとに行います。算出方法が複雑なため、エクセルのSTDEV関数を使って計算してみましょう。商品の需要は常に変動しているため、可能な限り過去のデータを参照して、正確な標準偏差を求めましょう。

 

リードタイム

リードタイムとは、商品の発注から納品までの期間を指します。発注リードタイムは、在庫を注文してから納品されるまでの時間です。例えば、発注してから3日後に納品された場合は、発注リードタイムは3日です。

また、発注間隔は定期的に発注している場合に使用します。週に1回発注している場合は7日、不定期で発注している場合は発注間隔は0日として計算します。

 

安全在庫の算出方法

安全在庫は、安全在庫係数・標準偏差・リードタイムをもとに計算します。

計算式は「安全係数×使用量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)」です。

例えば、安全在庫係数が1.65、標準偏差が10、発注リードタイムが5日、発注間隔が7日の場合、安全在庫は「1.65×10×√(5+7)=57.157」となるため、58個在庫を確保しておけば、欠品リスクを抑えられると言えます。

 

適正在庫の算出方法

 

適正在庫の計算方法はいくつかあります。ここでは代表的な計算方法を解説します。

 

「安全在庫+サイクル在庫」で計算

 

適正在庫の計算の最も基本となるのが「安全在庫+サイクル在庫」です。多くの業界で使用されている適正在庫の算出方法です。

サイクル在庫とは、発注から次の発注までの間に消費された半分の在庫量を表しています。たとえば10日に一度発注するのであれば、5日目までに売れた数量がサイクル在庫と考えられます。

 

「安全在庫+需要数」で計算

 

需要数から適正在庫を算出する方法です。顧客の需要に応える在庫数を満たす計算のため、顧客へ直接販売を行う店舗のような現場向きの計算方法です。

ただし、需要数から適正在庫を計算する方法は、シンプルで在庫切れの心配がないメリットがある一方、売れない日が続くと過剰在庫が増えてしまうデメリットもあります。

 

在庫回転率と在庫回転日数で計算

 

自社が適正在庫数を保てているかなど、適正在庫数が適正かを確認したい場合は、在庫回転率と在庫回転期間から計算する方法が最適です。在庫回転率は、1年に在庫が入れ替わった回数を示す数値です。在庫回転期間は、倉庫資産が完全に入れ替わるまでに要した年数を示しています。

 

在庫回転率と在庫回転日数は以下の式で計算できます。

回転率=年間売上高÷平均在庫高

回転期間=棚卸資産合計÷年間売上高

 

まとめ

安全在庫と適正在庫を維持することで企業の売上・利益を最大化させていくことができます。安全在庫を設定することで欠品の防止やキャッシュフローの改善などの効果も期待できるため、自社の取り扱い商品の特徴を理解して、市場ニーズに合わせた需要予測を行っていくことで、より精度の高い安全在庫と適正在庫を設定できるようになるはずです。

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